バンドギャップとは?――半導体が電気を流したり止めたりできる理由
バンドギャップとは何かを、原子のエネルギー準位から価電子帯・伝導帯、導体・半導体・絶縁体の違い、温度・光・不純物・材料による違い、Si・SiC・GaN・GaAs・CdTe・CIGS・ペロブスカイトへのつながりまで体系的に解説する。
この記事の結論
- バンドギャップは、価電子帯の上端と伝導帯の下端の間にある、電子が存在できないエネルギー領域
- ギャップの大きさは、電気伝導、発光・吸収波長、高温動作、耐圧などに強く関わる
- ただしバンドギャップの大きさだけで材料性能は決まらず、移動度・熱伝導率・欠陥・界面・加工性なども重要
まず結論
バンドギャップとは、半導体の中で
電子が自由に存在できないエネルギーの範囲
のことです。
より正確には、
- 電子が主に詰まっている価電子帯
- 電子が自由に動きやすい伝導帯
の間にあるエネルギー差を指します。
この差を、
と書きます。
バンドギャップは、半導体の性質を決める最重要パラメータの一つです。
なぜなら、電子が価電子帯から伝導帯へ移れるかどうかで、
- 電気を流すか
- 温度でどれくらい電気が流れやすくなるか
- どの波長の光を吸収するか
- どの波長の光を出せるか
- 高温で使えるか
- 高電圧に耐えられるか
といった性質が大きく変わるからです。
ただし、
バンドギャップが大きいほど優秀
という単純な話ではありません。
半導体材料は、バンドギャップだけでなく、
- 電子移動度
- 正孔移動度
- 絶縁破壊電界
- 熱伝導率
- 結晶欠陥
- 界面品質
- 加工性
- コスト
などの組み合わせで使い分けられます。
そもそも「エネルギーバンド」とは何か
原子1個なら、電子のエネルギーは飛び飛び
原子の中の電子は、好きなエネルギーを自由に取れるわけではありません。
量子力学では、電子が存在できるエネルギーは離散的です。
イメージとしては、
というように、飛び飛びのエネルギー準位があります。
原子が大量に集まると、準位が「帯」になる
結晶中には膨大な数の原子があります。
原子同士が近づくと、それぞれの電子状態が相互作用し、1本だったエネルギー準位が少しずつ分裂します。
原子数が非常に多いと、その分裂した準位がほぼ連続的に並びます。
その結果、
点のようなエネルギー準位
↓
帯状のエネルギー領域
になります。
これがエネルギーバンドです。
価電子帯と伝導帯
半導体で特に重要なのが、
- 価電子帯
- 伝導帯
です。
価電子帯
価電子帯は、原子同士の結合に関わる電子が主に存在するバンドです。
電子がここにいるだけでは、自由に結晶中を移動しにくいため、電流を運びにくい状態です。
伝導帯
伝導帯は、電子が結晶中を比較的自由に移動できるバンドです。
電子がここへ上がると、外部電界によって移動し、電流を運べるようになります。
その間にあるのがバンドギャップ
模式的には、
図1右上のように、伝導帯の下端と価電子帯の上端の差がバンドギャップです。
となります。
この、
がバンドギャップです。
- EC:伝導帯下端
- EV:価電子帯上端
です。
なぜバンドギャップがあると電気を流しにくくなるのか
電子が電流を運ぶには、自由に移動できる状態へ入る必要があります。
しかし価電子帯と伝導帯の間にバンドギャップがあると、電子はその差を超えるだけのエネルギーを得なければ伝導帯へ移れません。
つまり、
バンドギャップは、電子が自由に動ける状態へ移るための“エネルギーの壁”
と考えると分かりやすいです。
導体・半導体・絶縁体の違い
バンド構造を見ると、導体・半導体・絶縁体の違いを整理できます。
導体
金属では、
- バンドが部分的に占有されている
- あるいは価電子帯と伝導帯が重なっている
ため、電子が少しエネルギーを得るだけで動けます。
つまり電流が流れやすい。
半導体
半導体にはバンドギャップがあります。
しかしその幅は、室温の熱エネルギーや光、不純物添加などによって電子を伝導帯へ移せる程度です。
そのため、
普段は流れにくい
条件を変えると流せる
という性質を持ちます。
ここが「半導体」の最大の特徴です。
絶縁体
絶縁体では一般にバンドギャップが大きく、通常の温度や電圧では電子を伝導帯へ上げにくいため、電流が流れにくくなります。
ただし、
半導体と絶縁体の境界は「○eV以上なら絶縁体」という絶対的な一本線
ではありません。
実際の電気伝導は、
- バンド構造
- 欠陥準位
- 温度
- 電界
- 不純物
- 材料状態
にも左右されます。
1 eVとはどれくらいのエネルギーか
バンドギャップは通常、**eV(電子ボルト)**で表します。
1 eVは、
1個の電子が1 Vの電位差を通過するときに得るエネルギー
です。
ジュールへ直すと、
です。
原子や電子の世界では非常に扱いやすい単位なので、半導体物理ではeVがよく使われます。
シリコンのバンドギャップは約1.12 eV
室温付近のシリコン(Si)のバンドギャップは、およそ
です。
この値は、
- 小さすぎて常に大量の電子が伝導帯へ上がるわけでもない
- 大きすぎて電気的に制御できなくなるわけでもない
という、半導体デバイスに使いやすい領域にあります。
もちろん、Siが半導体産業の中心になった理由はバンドギャップだけではありません。
- 高品質なSiO₂を作れる
- 大口径ウェハを作れる
- 結晶技術が成熟している
- 微細加工技術が巨大に蓄積している
- コストが比較的低い
ことも非常に重要です。
バンドギャップが違うと何が変わる?
代表的な半導体材料を見ると、バンドギャップには大きな差があります。
| 材料 | バンドギャップの目安 | 特徴の例 |
|---|---|---|
| Ge | 約0.66 eV | 狭いギャップ、高いキャリア移動度 |
| Si | 約1.12 eV | 汎用半導体の中心 |
| GaAs | 約1.42 eV | 高速・光デバイス向け |
| 4H-SiC | 約3.26 eV | 高耐圧・高温・パワー用途 |
| GaN | 約3.4 eV | 高耐圧・高周波・LED |
| ダイヤモンド | 約5.5 eV | 超ワイドバンドギャップ材料候補 |
※値は温度・結晶構造等によって変化する。
バンドギャップが小さい材料
バンドギャップが小さいと、比較的少ない熱エネルギーでも電子が伝導帯へ上がりやすくなります。
そのため、
- 熱励起キャリアが増えやすい
- 高温で漏れ電流が増えやすい
傾向があります。
一方で、赤外線など低エネルギー光を吸収しやすい利点があります。
バンドギャップが大きい材料
SiCやGaNのような材料は、Siより大きなバンドギャップを持ちます。
これらはワイドバンドギャップ半導体と呼ばれます。
一般に、
- 高温で熱励起キャリアが増えにくい
- 高い絶縁破壊電界を持ちやすい
- 高電圧・高出力用途へ向きやすい
という利点があります。
ただし、バンドギャップが大きいこと自体が直接すべての性能を決めるわけではありません。
実際には、
- 欠陥密度
- 界面
- 移動度
- コンタクト抵抗
- 熱抵抗
- 結晶成長コスト
も重要です。
ワイドバンドギャップ半導体とは?
一般にSiより大きなバンドギャップを持つ材料群を、ワイドバンドギャップ半導体と呼びます。
代表例は、
- SiC
- GaN
です。
さらにダイヤモンドやGa₂O₃などは、超ワイドバンドギャップ半導体として研究・開発されています。
ワイドバンドギャップ材料は、
- EV
- インバータ
- 電源
- データセンター
- RF
- 高温環境
などで重要性が高まっています。
バンドギャップと温度
バンドギャップは完全に一定ではありません。
多くの半導体では、温度が上がるとバンドギャップが小さくなる傾向があります。
シリコンでも、
温度上昇
→ バンドギャップ縮小
→ 熱励起キャリア増加
という方向へ進みます。
このため高温になると、
- 漏れ電流
- 真性キャリア濃度
- デバイス特性
が変化します。
なぜ温度が上がると電気が流れやすくなるのか
半導体では、温度が上がると電子がより大きな熱エネルギーを得ます。
図2左のように、価電子帯から伝導帯へ励起される電子が増えます。
同時に価電子帯には電子の抜けた場所、つまり正孔ができます。
その結果、
- 伝導帯の電子
- 価電子帯の正孔
の両方が電流を運ぶようになります。
これが金属とは逆に、
半導体は温度が上がると電気を流しやすくなる
場合がある理由です。
真性キャリア濃度との関係
純粋な半導体では、熱によって生成される電子と正孔の数が重要です。
真性キャリア濃度 ni は概念的には、
のように、バンドギャップへ強く依存します。
ここで、
- Eg:バンドギャップ
- k:ボルツマン定数
- T:絶対温度
です。
指数関数的に効くため、バンドギャップが少し違うだけでも高温特性に大きな差が出ます。
不純物を入れたらバンドギャップはなくなる?
n型やp型半導体では、Siなどへ微量の不純物を入れます。
しかし、
不純物を入れたからバンドギャップそのものが消える
わけではありません。
不純物によって、バンドギャップ内に新しいエネルギー準位ができます。
例えばn型Siなら、伝導帯のすぐ下にドナー準位ができます。
図2中央のように、ドナー準位は伝導帯の近くに形成され、少ないエネルギーでも電子を供給できます。
伝導帯までの距離が小さいため、室温でも電子が伝導帯へ上がりやすくなります。
p型では何が起こる?
p型では、価電子帯の少し上にアクセプタ準位ができます。
価電子帯の電子がその準位へ移ると、価電子帯側に正孔が残ります。
そのためp型では正孔が主要キャリアになります。
つまり不純物添加は、
バンドギャップの中へ“踏み台”となる準位を作る
ようなものです。
フェルミ準位とは?
バンドギャップを理解すると、次に重要になるのがフェルミ準位です。
フェルミ準位は、電子がどのエネルギー状態に存在しやすいかを表す基準です。
真性半導体では概ねバンドギャップ中央付近にあります。
n型では伝導帯側へ寄り、p型では価電子帯側へ寄ります。
模式的には、
図2中央に示すように、フェルミ準位はn型で伝導帯側、p型で価電子帯側へ寄ります。
このフェルミ準位の違いが、pn接合を作ったときの内部電界やバンド曲がりへつながります。
バンドギャップは「光」とも直接つながっている
光子のエネルギーは、
です。
波長で書くと、
となります。
つまり、光の波長はエネルギーへ変換できます。
おおよそ、
です。
光がバンドギャップを超えると何が起こる?
半導体へ光を当て、光子のエネルギーがバンドギャップ以上になると、価電子帯の電子が伝導帯へ励起されることがあります。
図2右のように、光子のエネルギーがバンドギャップ以上なら、価電子帯の電子を伝導帯へ励起できます。
その結果、
- 電子
- 正孔
の対が生成されます。
これが、
- 太陽電池
- フォトダイオード
- イメージセンサー
- 光検出器
の基本原理につながります。
バンドギャップから吸収波長を概算できる
例えばSiのバンドギャップを約1.12 eVとすると、
となります。
つまりSiでは、約1100 nmより長波長側の光は、単純なバンド間遷移では吸収しにくくなります。
これがSiフォトダイオードの感度領域などと関係します。
太陽電池とバンドギャップ
太陽電池では、バンドギャップが非常に重要です。
バンドギャップが大きすぎると、
低エネルギーの光子を吸収できない
ため、太陽光の多くを利用できません。
逆に小さすぎると、
多くの光子を吸収できる一方、得られる電圧が低くなりやすい
というトレードオフがあります。
したがって太陽電池では、
どのバンドギャップの材料を使うか
が変換効率を左右します。
タンデム太陽電池は、異なるバンドギャップを組み合わせる
一つの材料だけでは、太陽光のすべての波長を理想的に利用できません。
そこで、
- 上層:大きなバンドギャップ
- 下層:小さなバンドギャップ
を組み合わせます。
高エネルギー光は上層で吸収し、低エネルギー光は下層へ通して吸収します。
これがタンデム太陽電池の基本的な考え方です。
LEDとバンドギャップ
LEDでは逆に、
電子が伝導帯から価電子帯側へ移るときに光を出す
現象を利用します。
そのためバンドギャップが大きいほど、より高エネルギー、つまり短波長の光になります。
概念的には、
という関係があります。
実際の発光波長は、材料組成・量子井戸構造・温度などにも左右されます。
GaNが青色LEDに重要な理由
GaNは約3.4 eVの大きなバンドギャップを持ちます。
これは可視光の青〜紫外領域に対応するエネルギーです。
そのためGaN系材料は、
- 青色LED
- UV LED
- 高出力・高周波デバイス
に重要です。
つまり、
バンドギャップは単なる電気伝導の指標ではなく、光の色にも直接つながる
ということです。
直接遷移型と間接遷移型
ここから少しだけ深く進みます。
同じバンドギャップでも、
- 直接遷移型
- 間接遷移型
という違いがあります。
直接遷移型
伝導帯の最低点と価電子帯の最高点が、運動量空間でほぼ同じ位置にあります。
そのため電子と正孔が再結合するとき、光を出しやすい。
代表:
- GaAs
- GaN
このためLEDやレーザーダイオードに向いています。
間接遷移型
伝導帯最低点と価電子帯最高点の位置がずれています。
電子が再結合するときに、光子だけではなく結晶格子振動であるフォノンも必要になります。
代表:
- Si
そのためSiは優れた電子デバイス材料ですが、効率良く光を出す材料としてはGaAsやGaNほど向いていません。
「同じEgなら同じ材料」ではない
例えばSiとGaAsでバンドギャップが近いからといって、性質が同じわけではありません。
重要なのは、
- 直接 / 間接遷移
- 電子移動度
- 有効質量
- 誘電率
- 熱伝導率
- 絶縁破壊電界
- 結晶品質
- 界面
- 酸化膜形成能力
などです。
バンドギャップは重要ですが、材料特性の一つです。
バンドギャップと絶縁破壊電界
一般にワイドバンドギャップ材料では、高い絶縁破壊電界を持つ材料が多くあります。
これがSiCやGaNがパワー半導体で注目される理由の一つです。
高い電界に耐えられれば、同じ耐圧を実現するためのドリフト層を薄く・高濃度にできる可能性があります。
結果として、
- オン抵抗低減
- 小型化
- 高電圧化
へつながります。
ただし、これも材料固有の欠陥やデバイス構造を含めて評価する必要があります。
バンドギャップと高温動作
温度が上がると熱励起キャリアが増えます。
バンドギャップが大きい材料では、伝導帯へ熱励起される割合が小さくなりやすいため、高温でも半導体としての制御性を保ちやすくなります。
そのためSiCやGaNは、
- 車載
- 高温環境
- 高出力電源
で有利になります。
欠陥準位はバンドギャップの中に現れる
理想結晶なら、バンドギャップ中には電子状態が存在しません。
しかし実際の材料には、
- 結晶欠陥
- 不純物
- 界面欠陥
- ダングリングボンド
があります。
するとバンドギャップ中に欠陥準位ができます。
これらは、
- キャリアの捕獲
- 再結合
- 漏れ電流
- 寿命低下
- しきい値変動
- 発光効率低下
へ影響します。
つまり実デバイスでは、
理想的なバンドギャップだけを見るのではなく、その中に何が存在しているか
も重要です。
MOSFETではバンドギャップがどう関係する?
MOSFETではゲート電圧を使って半導体表面のバンドを曲げます。
その結果、
- 空乏
- 蓄積
- 反転
という状態を作ります。
つまりMOSFETは、
半導体のバンド構造を電界で動かして電流を制御するデバイス
と見ることができます。
バンド図を理解すると、
- しきい値電圧
- 反転層
- 酸化膜
- 界面準位
の意味もつながってきます。
pn接合ではバンドが「曲がる」
n型半導体とp型半導体を接合すると、電子と正孔が拡散します。
その結果、内部電界が生まれ、エネルギーバンドが空間的に曲がります。
このバンドベンディングによって、
- 内蔵電位
- 空乏層
- 整流作用
が生まれます。
つまりpn接合を深く理解するには、バンドギャップだけでなく、
バンドそのものが空間的にどう変化するか
を見る必要があります。
ヘテロ接合ではバンドギャップの違いを利用する
異なる半導体材料を接合すると、それぞれのバンド構造が違うため、接合界面に、
- 伝導帯オフセット
- 価電子帯オフセット
が生じます。
これを利用して、
- HEMT
- HBT
- レーザーダイオード
- 太陽電池
などを作れます。
つまり異種材料を組み合わせるとき、
バンドギャップだけでなく、バンドの位置関係そのもの
が重要になります。
GaN HEMTもバンド構造を利用している
GaN系HEMTでは、AlGaN/GaNなど異なる材料の界面を利用します。
材料間のバンド構造や分極の違いによって、高密度の二次元電子ガスを形成できます。
その結果、
- 高速
- 高周波
- 高出力
に適したデバイスになります。
ここでも「GaNはバンドギャップが大きい」だけでは説明し切れません。
ヘテロ接合と界面のバンド構造が重要です。
バンドギャップを測るには?
バンドギャップは、材料の種類によっていくつかの方法で評価されます。
代表例は、
- 光吸収
- 透過率
- 反射率
- フォトルミネッセンス
- 分光エリプソメトリ
- 電気特性
です。
光学材料や薄膜では、吸収係数からバンドギャップを推定するTauc Plotが使われることもあります。
ただし直接遷移・間接遷移などによって解析方法が異なります。
薄膜ではバルクと同じEgになるとは限らない
実際のデバイスで使う薄膜では、
- 組成
- 結晶性
- 応力
- 欠陥
- 結晶粒径
- 量子閉じ込め
などによって、理想バルク値と見かけのバンドギャップが変化することがあります。
特に、
- アモルファス材料
- 化合物半導体
- ナノ材料
- ペロブスカイト
などでは、成膜条件とバンド構造が密接に関係します。
ペロブスカイトではバンドギャップを調整できる
ハライドペロブスカイトでは、組成を変えることでバンドギャップを比較的広い範囲で調整できます。
これにより、
- 単接合太陽電池
- シリコンとのタンデム
- LED
などへ利用できます。
つまり、
材料の組成を変えて欲しいバンドギャップを設計する
という発想です。
CIGSでも組成でバンドギャップが変わる
CIGSは、
Cu(In,Ga)Se₂
を基本とする薄膜太陽電池材料です。
InとGaの比率を変えることでバンドギャップを調整できます。
これも、
バンドギャップは「材料名で完全固定された数値」ではなく、組成設計によって動かせる
例です。
CdTeが太陽電池に使われる理由
CdTeは約1.45 eV付近のバンドギャップを持ち、太陽光利用に適した範囲にあります。
さらに直接遷移型で光吸収係数が大きいため、比較的薄い膜でも光を吸収できます。
このため薄膜太陽電池材料として利用されています。
バンドギャップだけで材料を選んではいけない
ここまで読むと、
目的に合うEgを選べばよい
ように見えます。
しかし実際の材料選択はもっと複雑です。
例えば、
- Siは1.12 eV
- GaAsは1.42 eV
- GaNは3.4 eV
ですが、用途は大きく異なります。
必要なのは、
- バンドギャップ
- キャリア移動度
- 絶縁破壊電界
- 熱伝導率
- 欠陥密度
- 界面品質
- 製造しやすさ
- コスト
の総合評価です。
バンドギャップは設計地図の入口であって、材料評価のすべてではありません。
よくある誤解
「バンドギャップの中には何もない」
理想結晶では、許容されたバンド状態がないという意味です。
実材料では欠陥や不純物によってギャップ内準位が生じることがあります。
「電子は物理的な壁を飛び越える」
バンドギャップは空間的な壁ではありません。
エネルギーの差です。
「バンドギャップが大きいほど高性能」
用途によります。
パワーデバイスでは有利な場合がありますが、低電圧・高速・光吸収などでは別の材料が有利になることがあります。
「半導体と絶縁体はEgだけで完全に分けられる」
単純ではありません。
実際の伝導は欠陥・温度・不純物・電界などにも依存します。
「Siは光デバイスに使えない」
Siは間接遷移型なので発光効率は低いですが、フォトダイオードやシリコンフォトニクスなど光関連技術には広く使われます。
バンドギャップを理解すると何がつながる?
バンドギャップは、半導体の多くの分野の入口です。
バンドギャップを入口に、電子と正孔、n型・p型、pn接合、MOSFET、LED、レーザーダイオード、光検出器、太陽電池、SiC・GaN、ヘテロ接合へ知識がつながります。
半導体を「材料の名前」で覚えるのではなく、
その材料のバンド構造が、どの機能につながるのか
を見ると理解しやすくなります。
最後に
バンドギャップは、半導体の中に存在する「電子が存在できないエネルギー領域」です。
しかし、その意味は単なる空白ではありません。
この幅によって、
- 電子がどれくらい励起されるか
- どの温度で電流が増えるか
- どの光を吸収するか
- どの光を放出できるか
- 高電圧にどこまで耐えられるか
が大きく変わります。
だからバンドギャップは、
半導体の電気・光・熱の性質をつなぐ中心概念
です。
ここを理解すると、pn接合、MOSFET、LED、太陽電池、SiC、GaNといった別々に見える技術が、一つの物理からつながって見えるようになります。
次に読む
参考文献
- S. M. Sze, Kwok K. Ng, Physics of Semiconductor Devices
- Ben G. Streetman, Sanjay Banerjee, Solid State Electronic Devices
- Robert F. Pierret, Semiconductor Device Fundamentals
- Charles Kittel, Introduction to Solid State Physics
- Peter Y. Yu, Manuel Cardona, Fundamentals of Semiconductors