ドライエッチングとは?――ガスとプラズマで微細構造を削る

ドライエッチングの原理を、ラジカル・イオン・シース・表面反応・側壁保護・ガスケミストリー・RIE/CCP/ICP・主要パラメータ・ARDE・ローディング・チャンバー状態まで体系的に解説する。

公開 2026/9/1 確認 2026/9/16 読了 18分 中級 執筆: 知識図書館 編集部

まず結論

ドライエッチングは、ガスから作った反応種を使って材料を除去し、微細な回路パターンを実際の膜や基板へ転写する技術です。

フォトリソグラフィは「どこを残し、どこを削るか」というマスクパターンを作りますが、露光しただけではシリコンや絶縁膜に溝はできません。そこでドライエッチングにより、ラジカルの化学反応、イオンの方向性、必要に応じた側壁保護を組み合わせます。

本質は単に削ることではなく、どの材料を、どの方向へ、どの速度で、どこまで、どのような断面形状で削るかを制御することです。

プラズマ中のラジカルが材料表面で化学反応を起こし、シースで加速された正イオンが開口部の底へ垂直に入射して異方性エッチングを進める様子
図1 ラジカルによる化学反応と、方向を持つイオンの作用を組み合わせて異方性エッチングを作る

ドライエッチングは何をしているのか

ウェットエッチングは液体の薬液で材料を溶解除去します。一方、ドライエッチングでは、フッ素・塩素・臭素を含む反応性ガス、酸素、アルゴン、水素、窒素などを使い、真空中で反応を進めます。

多くの装置ではガスへ高周波電力を加えてプラズマを作ります。プラズマ中には電子、正イオン、中性粒子、励起種、ラジカルなどが存在し、加工を理解する上で特に重要なのがラジカルとイオンです。

ラジカルとイオンは役割が違う

ラジカルは化学反応を進める

ラジカルは反応性の高い中性種です。例えばフッ素ラジカルがシリコン表面へ到達すると、シリコンと反応してSiF₄などの揮発性生成物を作れます。生成物が表面から離れて排気されることで、シリコンが除去されます。

化学反応だけでもエッチングは進みますが、ラジカルは中性なので特定方向へ強く加速されません。化学反応が支配的になると、横方向にも加工が進みやすくなります。

イオンは方向を与える

プラズマと基板の間には、シースと呼ばれる電位差を持つ領域ができます。正イオンはシースの電界によって基板方向へ加速され、比較的垂直に入射します。

イオンは表面結合を切り、反応を促進し、表面層や反応生成物の脱離を助けます。ラジカルだけなら横にも進む反応を、イオンが主に開口部の底で進めることが、異方性を作れる重要な理由です。

表面では何が起きているのか

ドライエッチングでは、プラズマだけでなく材料表面の反応を見る必要があります。代表的には次の七段階がつながっています。

  1. プラズマ中で反応種が生成される
  2. 反応種が材料表面まで輸送される
  3. 表面へ吸着する
  4. 表面原子と反応する
  5. イオン衝撃などで反応が促進される
  6. 揮発性生成物が形成される
  7. 生成物が脱離し、排気される
反応種生成、輸送、吸着、表面反応、イオン補助、揮発性生成物形成、脱離と排気の七段階
図2 ドライエッチングは、反応種生成から生成物の排気までがつながった表面反応系

どこか一つが遅ければ、全体の加工速度は上がりません。反応種が十分でも生成物が揮発しにくければ表面に残り、イオンエネルギーが高くても反応性ガスが不足すれば化学反応は進みません。

なぜ垂直に削れるのか

微細加工では、横方向の加工を抑えてマスクの開口を下方向へ転写する異方性が重要です。上から入射するイオンは開口部の底へ届きやすく、側壁には当たりにくいため、底部の反応を選択的に進められます。

ただし、イオンの方向性だけで垂直な断面を作るわけではありません。多くの工程では、側壁へ保護膜を形成するパッシベーションも重要です。

側壁保護が形状を作る

SiO₂やSiNを加工するフルオロカーボン系プロセスでは、CFₓ系反応種からポリマー状の膜が形成されることがあります。この膜が側壁を守って横方向の反応を抑える一方、開口底ではイオン衝撃によって保護膜が除去されるため、底部の加工が進みます。

マスク開口の側壁をポリマー保護膜が覆い、底部ではイオン衝撃が保護膜を除去して加工を進める断面図
図3 側壁は保護し、底部の保護膜だけをイオンで除去することで垂直形状を作る

垂直形状は、化学反応、イオン衝撃、側壁保護のバランスで作られます。バランスが崩れると、膨らみ、テーパー、アンダーカット、入口の狭まり、底角部の掘れ、側壁残渣などの形状異常が起こります。

材料によって使うガスが違う

材料代表的に使われるガス系主な考え方
SiF系、Cl系、HBr系など揮発性シリコン化合物の形成と断面形状の制御
SiO₂CF₄、CHF₃、C₄F₈などのフルオロカーボン系フッ素反応とポリマー形成のバランス
SiNF系、フルオロカーボン系SiO₂やマスクに対する選択比の制御
AlCl₂、BCl₃系など揮発性金属塩化物の形成
Ti系Cl系、F系など材料と下地に応じた反応設計
有機膜・レジストO₂系炭素をCOやCO₂などへ酸化
Cu揮発性反応だけでは加工が難しい化学・物理・ウェット処理などを組み合わせる

これは固定的な対応表ではありません。実際にはマスク、下地、寸法、アスペクト比、目標形状、温度、装置方式に合わせて混合ガスを設計します。

SiO₂でフルオロカーボン系を使う理由

SiO₂はフッ素系反応種で加工できますが、フッ素を強くしすぎるとシリコンやレジストなども削れやすくなります。そこで、加工を進めるフッ素ラジカルと、ポリマーを形成するCFₓ系反応種の競争を利用します。

CFₓが多いと側壁保護や選択比に有利な場合がありますが、過剰になると底部まで覆われ、加工停止や残渣につながります。加工を進める反応と加工を止める保護膜を同時に作り、その釣り合いを制御することが重要です。

RIE、CCP、ICPは同じ意味ではない

RIE

RIE(反応性イオンエッチング)は、反応性ガスの化学反応とイオン衝撃を組み合わせる加工の考え方です。特定のプラズマ生成方式だけを指す言葉ではありません。

CCP

CCP(容量結合型プラズマ)は、電極間へ高周波電圧を加え、容量結合でプラズマを生成する方式です。構成が比較的単純で広く使われますが、プラズマ生成と基板バイアスが強く連動しやすい構成もあります。

ICP

ICP(誘導結合型プラズマ)は、コイルへ高周波電流を流し、誘導電界で電子へエネルギーを与える方式です。高密度プラズマを作りやすく、プラズマ生成用のソース電力と、イオンエネルギーを調整するバイアス電力を、ある程度分けて制御できます。ただし両者は完全に独立ではありません。

上部コイルで誘導電界とプラズマを作り、基板電極のバイアスでシースとイオンエネルギーを制御するICP装置模式図
図4 ICPではソース電力とバイアス電力の役割をある程度分けて調整する

ソース電力とバイアス電力

ソース電力を上げると、一般には電子加熱、電離、ラジカル生成、プラズマ密度が増える方向へ進みます。一方、バイアス電力を上げると、シース電圧、イオンエネルギー、方向性、スパッタ作用が増える傾向があります。

しかしバイアスを強めすぎると、マスク消耗、基板損傷、帯電、加熱、選択比低下が増える可能性があります。「電力を上げれば高性能になる」という単純な関係ではありません。

圧力を変えると何が起きるか

圧力が低くなると粒子間の衝突頻度が下がり、平均自由行程が長くなるため、イオンの方向性を保ちやすくなる場合があります。圧力が高くなると、衝突、ラジカルの滞留時間、プラズマ分布、イオンエネルギー分布が変わります。

低圧なら常に高異方性、高圧なら常に高加工速度というわけではなく、装置構造とガス反応を含めた最適点があります。

温度は冷却だけの条件ではない

基板温度が変わると、吸着、表面反応、ポリマー堆積、脱離、揮発性が変化します。フルオロカーボン系では低温化により保護膜や生成物が残りやすくなり、側壁保護が強まる場合があります。逆に温度が高すぎると保護が弱まり、横方向の加工が増えることがあります。

極低温エッチングでは、この温度依存性を積極的に利用して断面形状を作ります。

加工速度だけでは評価できない

評価項目見る内容
加工速度単位時間当たりの除去量
選択比目的膜とマスク、または目的膜と下地の加工速度比
面内均一性ウェハやパネル内で加工量がどれだけ揃うか
断面形状側壁角度、膨らみ、テーパー、アンダーカットなど
損傷イオン衝撃、紫外線、帯電などによる下地への影響
残渣ポリマーや反応生成物が残っていないか

例えばSiO₂を100 nm/min、マスクを10 nm/minで削る場合、SiO₂/マスクの選択比は10です。量産工程では、これらの評価項目を同時に釣り合わせる必要があります。

終点検出とオーバーエッチング

膜厚には面内ばらつきがあるため、平均的に膜が抜けた時点でも厚い部分が残ることがあります。発光分析、干渉計、質量分析、時間管理などで終点を検出し、全面を確実に抜くため追加加工を行う場合があります。

追加加工を増やしすぎると、下地の削れ、マスク消耗、寸法変化、損傷が増えます。

同じ条件でもパターンによって速度が変わる

ローディング効果とマイクロローディング

加工面積が増えると反応種の消費量も増え、加工速度が変わることをローディング効果と呼びます。局所的なパターン密度によって反応種の供給や生成物の排出が変わる現象は、マイクロローディングと呼ばれます。

ARDEとRIEラグ

ARDE(アスペクト比依存エッチング)は、穴や溝が深くなるほど加工速度が低下する現象です。深い構造では、ラジカルが底まで届きにくい、生成物が排出されにくい、イオン角度分布や帯電、側壁衝突の影響が大きくなるなどの要因が働きます。

異なる開口寸法で狭いパターンほど加工が遅れる現象は、RIEラグとして現れることがあります。

広い開口と狭い開口、孤立パターンと密集パターンで加工深さが変わるARDEとマイクロローディングの比較図
図5 同じ装置条件でも、開口寸法と周囲のパターン密度によって加工深さが変わる

チャンバー壁面も工程の一部

量産装置では、ウェハ以外にも反応生成物やポリマーが堆積します。壁面状態が変わると、ラジカル消失、再結合、ポリマー形成、放出ガス、汚染、プラズマの電気的負荷などが変わります。

そのため同じレシピでも、洗浄直後と数百枚処理後で結果が異なることがあります。チャンバー洗浄、シーズニング、ダミーウェハ、消耗部品、壁面温度の管理が重要です。

高周波整合状態も結果へ影響する

プラズマの電気的な負荷は固定ではなく、ガス、圧力、電力、壁面状態によって変わります。整合器は高周波電源から見た負荷を調整し、反射電力を抑えます。

整合状態が変われば、電極電圧、電流、シース電圧、プラズマ分布も変わる場合があります。特に大面積電極では、高周波を単純な一点の電圧として扱えなくなることがあります。

大面積FPDでは何がさらに難しくなるか

半導体ウェハよりはるかに大きいFPDガラス基板では、ガス供給、排気、高周波、電極インピーダンス、プラズマ密度、温度の分布が位置によって変わります。

小型チャンバーをそのまま拡大すれば大型装置になるわけではありません。大面積化すると、装置全体を分布を持つシステムとして設計する必要があります。この考え方はFOPLPなどの大型パネル工程にもつながります。

よくある誤解

「電力を上げれば加工速度は上がる」

必ずしもそうではありません。反応種、イオンエネルギー、表面反応、物質輸送のどこが律速しているかで変わります。

「バイアスを上げれば垂直になる」

方向性を強められる範囲はありますが、マスク消耗、損傷、帯電、底角部の掘れなどが増える場合があります。

「プラズマ密度が高いほどよい」

高密度化は高い処理能力に有利な場合がありますが、ラジカルとイオンの流束も同時に変わります。

「同じレシピなら同じ結果になる」

壁面、消耗部品、温度、高周波整合、ガス供給の状態まで含めて工程です。

「最後に寸法だけ確認すればよい」

断面形状、残渣、損傷、選択比、面内均一性、下地状態まで評価する必要があります。

ドライエッチングを見ると半導体製造が見えてくる

ドライエッチングには、プラズマ物理、表面化学、真空、高周波、伝熱、流体、材料、電気、制御の技術が同時に存在します。そのため、一つの条件だけで結果は決まりません。

圧力を変えればプラズマが変わり、プラズマが変われば高周波負荷、ラジカルとイオンのバランス、最終的な断面形状も変わります。ドライエッチングを理解することは、半導体製造装置がなぜ単純なレシピ通りには動かないのかを理解する入口でもあります。

今後扱うテーマ

  • ICPとCCPの違い
  • シースとは?
  • RFマッチングとは?
  • エッチングの選択比とは?
  • ARDEとは?
  • 半導体装置でチャンバーシーズニングが必要な理由

参考資料

  • Michael A. Lieberman, Allan J. Lichtenberg, Principles of Plasma Discharges and Materials Processing
  • John W. Coburn, Harold F. Wintersによるプラズマ支援エッチングの基礎研究
  • Stephen M. Rossnagelによるプラズマ処理・スパッタリング関連文献
  • 半導体製造装置メーカー各社のエッチング・プラズマ処理技術資料
  • SEMI関連の半導体製造・装置技術資料