フロスをしたら臭い?! 歯と歯の間で何が起きているのか
フロスを通したときだけ強い臭いがするのはなぜでしょうか。歯間部にはプラークや食物残渣が停滞し、嫌気性菌がVSCを作ることがあります。『フロスが臭い=歯周病確定』ではない理由も含めて科学します。
この記事の結論
- フロスに臭いがつくことは、歯間部にプラークや有機物が停滞していた可能性を示す。
- 歯間部もVSC産生源になり得る。特に歯周状態が悪い人では寄与が大きくなる。
- フロス追加でVSCが低下した臨床試験があるが、舌清掃の影響の方が大きかった。
- 『フロスが臭い=歯周病確定』ではない。出血や腫れなど他の所見と合わせて考える必要がある。
歯を磨いた。
口もさっぱりした。
そのあとフロスを通してみる。
そして、
フロスの臭いをかいだ瞬間、
「うわ、臭い……」
となる。
かなりショックです。
しかも、
特定の歯と歯の間だけ、
妙に臭うことがあります。
すると、
「ここ、腐ってる?」
「歯周病?」
と不安になります。
結論から言うと、
フロスが臭うこと自体は珍しくありません。
そして、
歯と歯の間は、
実際に口臭物質が作られる場所の一つです。
ただし、
フロスが臭い=歯周病確定
ではありません。
何がそこで起きているのかを分けて考える必要があります。
歯間は「歯ブラシだけでは届きにくい」
歯ブラシは、
歯の表面を清掃するには非常に重要です。
しかし、
歯と歯が接触している部分や、
その直下の歯間部には、
毛先が十分に届かない場所があります。
そこに、
- プラーク
- 食物残渣
- 剥離上皮
- 唾液由来タンパク質
などが停滞します。
すると、
細菌が利用できる材料が残ります。
臭いの正体はVSC
口臭の主要物質として知られるのが、
VSC(揮発性硫黄化合物)
です。
代表例は、
- 硫化水素
- メチルメルカプタン
- ジメチルサルファイド
です。
厚生労働省資料でも、
これらは嫌気性菌が、
唾液・血液・剥離上皮・食物残渣中の含硫アミノ酸を分解することで産生すると説明されています。
つまり、
歯間に有機物と嫌気性菌が集まれば、
そこでもVSCは作られ得ます。
実際、歯間部もVSC産生に関係する
40人を対象に、
口腔内のVSCがどこから出ているか調べた研究があります。
まず舌苔を除去し、
その後、
歯間部を専門的に清掃しました。
すると、
舌苔除去後にも残っていたVSCが、
歯間部清掃によってさらに低下しました。
特に、
歯周状態が悪く、
メチルメルカプタンが高かった群では、
歯間部がVSC産生に、
かなりの割合で寄与していました。
つまり、
歯と歯の間は、ただの食べかす置き場ではなく、口臭ガスを作る場所になり得る
ということです。
じゃあ、フロスすると口臭は減る?
研究があります。
歯周病のない19人を対象に、
- 歯磨きのみ
- 歯磨き+フロス
- 歯磨き+舌清掃
- 歯磨き+フロス+舌清掃
を比較したクロスオーバー試験です。
結果として、
舌清掃の影響が最も大きかった一方、
フロスを追加するとVSC濃度が有意に低下
しました。
つまり、
フロスは、
少なくとも一部の口臭原因物質を減らす方向に働く可能性があります。
「フロスが臭い」のは、臭いを掘り出しただけ?
感覚としては、
かなり近い部分があります。
フロスを入れると、
歯間に停滞していた、
- プラーク
- 食物残渣
- 細菌代謝物
などが、
糸に付着します。
普段は狭い場所に閉じ込められていた臭いを、
鼻の近くまで持ってくる。
だから、
強烈に臭く感じる
ことがあります。
フロスそのものが臭いを作っているわけではありません。
片方だけ臭うのはなぜ?
左右全部ではなく、
一か所だけ臭う。
この場合、
その部位に、
- 食物が詰まりやすい
- 接触点がゆるい
- 歯石やプラークが多い
- 歯肉炎がある
- 深い歯周ポケットがある
など、
局所的な違いがある可能性があります。
特定部位だけ毎回強く臭うなら、
その場所を歯科で確認する意味があります。
出血もするなら?
フロスをしたときに、
臭いだけでなく、
出血
もある。
これは、
歯肉炎や歯周炎など、
炎症がある可能性を考える材料になります。
ただし、
初めてフロスを使ったときや、
強く押し込んだときに、
物理的に傷つけて出血することもあります。
つまり、
出血一回だけで歯周病確定ではありません。
しかし、
毎回同じ場所から出血し、
腫れや口臭も続くなら、
歯周組織を評価する価値があります。
血液も口臭材料になる
厚生労働省資料でも、
VSCの材料として、
血液
が挙げられています。
歯周炎などで出血があると、
細菌が利用できるタンパク質源が増えます。
つまり、
歯肉の炎症と口臭は、
単純に「歯垢が多い」だけではなく、
炎症そのものが細菌代謝の材料を供給する
という面もあります。
歯間の汚れと口臭には実測上の関連もある
口臭を訴える99人について、
舌と歯間部のプラークを画像解析し、
口臭との関係を調べた研究では、
舌・歯間部のプラーク指標が、
官能的口臭スコアやVSC濃度と関連していました。
つまり、
歯間部の状態は、
実際の口臭測定値とも無関係ではありません。
フロスした後、臭いがなくなるなら?
これは比較的分かりやすいです。
何日か継続して、
毎日歯間清掃を行う。
その結果、
フロス自体の臭いが弱くなっていく。
これは、
歯間に停滞していた有機物やプラークが減っている可能性があります。
ただし、
臭いだけで歯周病の改善まで判断することはできません。
フロスの使い方で注意すること
歯間部を掃除したいからといって、
勢いよく、
歯ぐきに糸を突き刺す必要はありません。
歯の側面に沿わせ、
汚れをぬぐうように使います。
歯間が広い場所では、
歯間ブラシの方が適していることもあります。
重要なのは、
歯間部の形に合った清掃
です。
結論:臭いフロスは「歯間の環境」を教えている
フロスをしたら臭い。
それだけで、
大病を意味するわけではありません。
しかし、
その臭いは、
普段見えない歯間部に、
細菌と有機物が停滞していた
ことを教えてくれます。
特に、
同じ場所が毎回臭う。
出血する。
腫れている。
歯周ポケットが深い。
そんな場合には、
歯周病などが関係している可能性があります。
フロスの臭いは、
単なる「気持ち悪い現象」ではなく、
歯ブラシでは見えなかった口腔環境のサイン
なのです。
参考文献
- Faveri M, et al. A cross-over study on the effect of various therapeutic approaches to morning breath odour.
- Yaegaki K, et al. The relationship between volatile sulfur compounds and major halitosis-inducing factors.
- Plaque autofluorescence as potential diagnostic targets for oral malodor
- 厚生労働省 e-ヘルスネット:口臭の原因・実態
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